『現代中国経営者列伝』を読みました

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アジアをフィールドに仕事ができないかと模索するようになって早4年が経とうとしています。(時間が立つのは恐ろしいほど早いですね…。)

最近、少しずつ中国のIT関連の仕事に関われるようになり、ここは一度中国ITの「聖地」ともいえる深圳に行くべきだろうと思い、今年の4月に行ってきました。

帰国後、現地で参加した「ニコ技深圳観察会」の日本での同窓会があった際に、過去の参加者でジャーナリストの高口康太さんにお会いしました。間もなく『現代中国経営者列伝 (星海社新書)』という新刊が出版されるというので、早速Amazonの予約サイトを拝見すると、レノボ、ハイアール、ファーウェイ、アリババ、シャオミといった日本でもよく知られた企業の経営者の名前がずらり。「これは読まねば!」とすぐにポチっと購入ボタンを押しました。

「永不放弃(決してあきらめない)」の精神

読みはじめてすぐ、リズムのあるわかりやすい筆致で語られる経営者たちの物語にぐいぐいと引き込まれ、あやうく電車を乗り過ごしてしまうほど夢中になって読んでしまいました。

前半部分に登場する経営者はいわゆる「文化大革命」やその後の改革開放路線からの天安門事件、さらに南巡講話といった「激動」と一口に言っては気の毒なほど時代の荒波にさらされた世代です。

人並みに中国の近代史を知っているつもではいたものの、そこはやはり対岸の火事で、今回この本を通してはじめて実際にその社会の変化に翻弄される血が通った人々の生活や感情を思い知りました。

『現代中国経営者列伝』で取り上げられた経営者に共通して言えることは、どんな逆境にも決してくじけなかったということです。もちろんだからこそ今も生き残っているわけですが、その精神力の強さを示す数々のエピソードは圧巻の一言。

私が特に感激したのはアリババの馬雲の章でした。優秀だけど時代の荒波に…といったパターンが多い中、彼は勉強もそこそこ、さらには外見が原因で就職に失敗したこともあるそうです。そんな半生を過ごしたら、「オレの人生、どうせこんなもん」と腐ってしまうのが普通。ところが馬雲は決してあきらめず、腐らず、一歩一歩前進し、アリババを世界有数の企業に育てた今もなお前進し続けています。

私は父の急逝で中国留学の夢を果たせなかったという過去があり、そのことをいまだに恨みに思っていましたが、理不尽な仕打ちにも決してあきらめない中国経営者の姿勢を知り、文字通り自分の小ささが恥ずかしくなりました。今後馬雲と同じく「永不放弃」を座右の銘にして、自分なりに前に進んでいきたい、読み終わった後、そんなパワーが湧いてきました。

現代中国経済史をトレースするにも最適

私の感想としては何と言ってもくじけない精神に感銘を受けたことがいちばんですが、そういった感情的な部分を抜きにしても『現代中国経営者列伝』はこれから中国とビジネスを始めるという人には一読の価値があります。

現在の中国は共産党一党独裁のため、上からの通達で一気に社会が変わってしまうという歴史を繰り返してきました。そのため、経営者たちのストーリーもだいたいみな同じタイミングで転機を迎えます。それぞれまったく別々の物語でありながら、1冊通して読み終えた時には現代中国経済史の流れが一通り頭に入っていると思います。

最終章で触れられている次世代の経営者や中国で起こりつつあることはまだまだ萌芽にすぎず、それほど魅力的には映らないかもしれませんが、きっといつか「そう言えば最初に○○のことを知ったのはこの本だった」という展開が生まれてくるので、気になるキーワードはチェックしておくことをおススメします。

著者は実はあこがれの?メディアの「中の人」だった!?

最近、話題の本といっても内容が薄かったり胡散臭かったりすることが多く、本を読む機会が減っていましたが、久しぶりに夢中になって読書ができたのでうれしくて記事を書いてしまいました。

実はお会いした時には気付かなかったのですが、著者の高口さんは私が何年も前から定期的にチェックしているブログ『Kinbricks Now』の運営者でした。「中の人」は中国語にもとても堪能で、かつ極端な親中派でもない印象から、記事の内容についてとても信頼できると感じていたので、中国の情報を知りたいという人には必ずおススメしていました。

そんな方が書かれた本なので、面白くないはずがないですね。中国に関わる全ての人に読んでいただきたいホント、おススメの一冊です!!


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中野 志穂(ねこりん)

IT業界に身を置くようになって10余年。最近は主にギーク中国語講座のねこりん。

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