Twitterのタイムラインを眺めていたら、10年くらい前、少しだけPDAのマーケティングに関わったことを思い出しました。
●PDAってこんなものでした
「PDA!懐かしいねー」と反応する人は、きっとデジタルガジェットオタクのおっさんではないでしょうか(笑)
PDAはPersonal Digital Assistantの略で、日本では「携帯情報端末」などと呼ばれていました。代表的なものが「Palm」。懐かしいですねー。それからソニーの「CLIE」を覚えている方もいるかもしれません。
PDAはちょっとPCチックな電子手帳という感じのものでしたが、とにかく、売り方がさっぱりわかりませんでした。電子手帳として使う人が多かったものの、PDA自体に通信機能がないので、グループウェアなどと同期するにはPCが必ず必要になります。
PDAに直接入力するのも超~面倒。付属のペンみたいなもので画面をなぞって入力するんですが、「グラフィティ」とかいう独自の入力ルールがあって、「Aを入力するときはこうなぞる」みたいなのが決められているのです。
思わず「えっ!?これ、アルファベットから記号まで全部ルールを覚えるんですか??」と大声を出したのをよく覚えています(^_^;)
するとですね、持ち主は「それができなくちゃ始まらないっしょ(心の声:まったく、これだからリテラシー低い奴は参っちゃうぜ)」みたいなこというわけです。
それって当時のPDAが「PDA使いこなしちゃう俺」的な意識の人々にしか受け入れられていないということを端的に表していて、私はもう「ダメだこりゃ」と思いました。
今後の流れを先読みすれば、PDAはこれから絶対誰もが持つものになる。早く仕掛けて地位を築きたい、というマーケティングチームの意図に異論はありませんでしたが、それにはまずPDA本体が通信機能を持ち携帯電話と融合すること、そして何よりもっと操作性がよくなる必要があるだろう、というのが当時の私の意見でした。
●スマホブレイクの立役者はやっぱり……
もうおわかりと思いますが、当時私が携帯情報端末の最終形としてイメージしていたものは、現在のスマホそのものです。でも「私のいった通りになったでしょ?」とかそういうことをいいたいのではありません。
さあ、ここからが本題ですよ(笑)
通信インフラが整備されて、PDAが携帯と融合するところまでは誰もが想定していました。でも、正直、使い勝手がまさかこれほど劇的に変わるというのは、実は多くの人が予想していなかったのではないでしょうか。
少なくとも私は、PDA的携帯電話は「使い勝手」の問題が普及のネックになるに違いないとずーーーっと思っていました。iPhoneが最初に発売されたとき、まったく食指が動かなかったのもPDAの操作性の悪さが強烈に印象に残っていたからです。
でもね、スマホはあっという間に広がりました。それは、今では当たり前になってしまった「スマホ的使い勝手」がきちんと追求されていたからに他なりません。
そして、それを実現したのはアップルであり、さらにジョブズ氏なくしては実現しなかったのでは、と改めて思います。
私はジョブズさんと知り合いではないので、本当のところどんな人であったのかはわかりません。それでも、相当な変人で、彼を恨んでいる多くの人がいただろうことは想像に難くありません。
ジョブズ氏を崇拝している人、憧れている人は数多くいると思いますが、私はどちらかというと彼に振りまわされた多くの人に同情する気持ちの方が強いです。きっと、自分が彼のような天才肌の人間ではないとわかっているので、周りの人間の方に感情移入しやすいのだと思います。
それでも、携帯情報端末の操作をここまで直観的なものにいきなり作り上げたことは、PDA時代を知っている私にしてみるとまさに驚天動地といっていい出来事でした。
優れていたからこそ、あまりにあっさりと浸透してしまった「スマホ的操作」ですが、これがジョブズ氏の完璧主義の賜物であることは忘れないでいたいな、とPDAのことを思い出して、改めて思ったりした次第です。
ありがとう、ジョブズさん。
ちなみに、冒頭の写真はアップルから出ていた「Newton」というPDA。ジョブズ復帰前で、アップルがどーしよーもない頃の製品。商業的にもイマイチ成功しませんでした。
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中野 志穂(ねこりん)
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