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ニコ技深圳観察会に参加しました(その4)

深圳スタートアップ

Dobotのエントランスで参加者のみなさんと

観察会2日目。華強北のスターバックス前に集合して、その日はすぐにバスに乗り込み郊外へ。

製品に対する意識が変わる「現場」体験

最初に見学したのは昨日見学したTroublemakerさんが提携している工場です。

祝日が終わったので、この日はガチで稼働しているラインや金型のメンテなどをしている現場を見学することができました。経営者はイタリア人(たぶん)で、深圳の中でも比較的高品質な工場とのことでした。それでも、最新鋭という感じではなく、さながら子供の頃近所にあった町工場を彷彿とさせる雰囲気。

深圳工場

下町にあるような町工場の風情

私たちが見学した時にはスマホケースとケーブルのセットをラインでパッケージしていました。よどみなく黙々と作業を続ける工員さんたち。その工程を見ていたら、いつも無造作にゴミ箱に捨てていた様々なパッケージが突然愛しいような感じになるから不思議です。

深圳工場

ラインで黙々と作業をする工員の方々

また、私たちが日常的に使っているスマホケーブルの中には多数の電線があり、それをピシッと整列させなければいけないそうです。それを並べたり揃えたりする工具もあり、またまた急に「ケーブルなんて百均で十分でしょ?」みたいに思っていた自分が恥ずかしくなりました。作っている現場を見て、やっと高いケーブルの値段の理由がわかりました。

深圳工場

ケーブルの先端での配列が正しいかを拡大してチェックする

「超酷」なスタートアップへ

そして昼食後は再びバスで南山地区へ。DobotとMakeblockという深圳の中でもとても注目されている二つのスタートアップを訪問しました。どちらも注目されているだけあって、私は何度も「超酷~」とつぶやいてしまいました。中国語で「かっこいい」「クールだ」といった意味の言葉です。

Dobotは完全な産業用ではなく、でもおもちゃでもない、アイディア次第で様々な使い方ができるロボットアームです。デモも見せていただきましたが、文字を書いたりレーザー彫刻をしたり、そして何と3Dプリンターにもなってしまうという優れものです。直感的にプログラムを組むことができるソフトもあり、教育教材としても使えるようになっています。

Dobot

かわいいロボットアーム、Dobot

Makeblockはその名の通り何十種類ものパーツを組み合わせて自由な発想で電気工作を楽しめるキットです。いきなりオリジナル作品を作るのはハードルが高いという方には、プラモデルのように設計図通りに組み立てればOKというセットもあります。代表的なセット商品である「mBot」は日本でも13,000円ほどで購入可能。手頃な価格なので、大人が遊んでもよし、お子さんのプログラミング教育に使ってもよし、ですね。

MakeBlock

中国の獅子舞ロボット。スイッチを入れると太鼓を打ち鳴らし、ドラをたたき、獅子が踊ります。

この2社の担当者とは日本に帰国後もつながることができたので、今後日本マーケットの進出にあたって何かサポートができないかなーと思っています。訪れた企業とその後どういう関係を築けるかは当然のことながら自分次第。多少あつかましいくらいでもいいので、ファンになった企業にはしっかりアピールするのがねこりん流です(笑)

心に創造力の火を灯そう

そして、この日の最後に訪問したのは柴火創客空間。中国語で「薪」を意味する「柴火」、その名の通り、メイカーたちの創造力に火をつけるためのコミュニティスペースで、Seeedという会社が運営しています。(Seeedは3日目に訪れるので、そこで詳しく説明します。)ニコ技深圳観察会を早くから支援してくださっているというVioletさんがイギリスでの活動やスペースの目的、意義、どんなことを期待しているのかをお話しししてくれました。

特に印象的だったのが、メイカーに関する考え方です。メイカーというとどちらかといえばハードを作る人、というイメージが強いですが、柴火に掲げられた図では、普通の人が思いつかないような(創造的な)アイディアを実際に使える「形」にし、企業と一般大衆の橋渡しをする人々がメイカーだというのです。

柴火

柴火が考えるメイカー像を説明するVioletさん

私自身は電気工作もしませんし、仕事もメーカーではなく、一貫してネット上の実態があるようなないようなものを扱ってきました。でも、柴火でVioletさんからこのお話を伺い、「あ、私もメイカーなのかもしれない」そう思ったのでした。

深圳の新しいおしゃれ空間OCT

その後、柴火創客空間があるOCT(華橋城)を少しだけ散策。OCTは深圳についた翌日、一人で訪れて銀行口座を作ったり初WeChat Payでご飯を食べたりしましたが、改めて散策して本当に大好きになりました。昔、工場で使われていたと思われる機器がオブジェとして街のアクセントになっている感じや、ひしめくように立ちながらぶ個性豊かなお店、カフェでのんびりお茶をしている人々、本当に街のどこを歩いていてもワクワクします。

OCT

再開発が進むOCTでは工場にあった機器の一部も素敵なオブジェに変身

そして雲南の麺をすすりながら、ぬるいビールを飲み(これぞ中国)、ホテルまでは中国のタクシー配車アプリ滴滴を使って帰ってきました。

その5続く

ニコ技深圳観察会に参加しました(その3)

JENESIS

JENESISのエントランスで参加者のみなさんと

3日目、いよいよ深圳観察ツアーがスタートしました。

華強北のアクセラレーター

最初はアクセラレーターのTroubleMakerとHAX。

正直なところ、スタートアップのサービスには興味があっても、どんな風に成長していくのかはあまり興味がなかったので、アクセラレーターが具体的にどんなことをしているのかほとんどイメージがありませんでした。

そんな中、TroubleMakerで伺ったお話は、まるで親戚のおじさんみたいに(こんな表現でごめんなさい…)寄り添って支援するという印象でした。困ったことはないかと気を配り、一緒にご飯を食べる。そんなつながりの中で、みんなで楽しいアイディアを磨いていく。

アクセラレーターがそうなのか、深圳だからそうなのか、TroubleMakerがそういうチームなのか、私にはよくわかりません。でも、日本では前時代の悪しきものとして完全に嫌われている「飲みニュケーション」的なものが肯定的に機能していることがとても新鮮に感じられました。

そして次はHAX。こちらは言ってみれば本気の学祭前夜という雰囲気。決められた期限の中で、クラウドファンディングに出品し資金を集めるまでを支援しています。当日はそんなたくさんのチームが制作に没頭している姿が…見られるはずだったんですが、あいにく中国の祝日で、残念ながらオフィスは閑散としていました。それでもいつかのチームがデスクで作業をしていたので、やはり学祭前夜のような熱気を感じることはできました。

インターン話で頭がいっぱいに

その後、バスに乗って宝安地区にあるJENESISへ。ここは藤岡さんという日本の方が経営する工場で、日本の大手が手掛ける製品の製造もおこなっています。でも、私にとって何といっても衝撃だったのがいつでもインターン受け入れOKということ。しかも参加者の中に実際体験された方がいて、私はすっかりそのことで頭がいっぱいになってしまい、その後のお話しがほとんど耳に入りませんでした。(本当にすみません…)

その後、やはり休日ということで稼働はしていませんでしたが、実際のラインを見学させていただき、品質管理についての工夫などを聞かせていただきました。

私自身は何かを工場に発注したという経験がなので、そういう方々がどういうポイントで工場を選択するのかほとんどイメージすることができません。また、深圳の工場自体もはじめてだったので、比較対象がなく、見学した際にはそれほど強く感じませんでしたが、思い返してみるとJENESISの工場はいい意味でとても「日本的」でした。これなら日本からも発注が相次いで大変だろうと思いましたが、人件費の高騰などで「生き残りに必死」という言葉がとても印象的でした。

でも、藤岡さんのお話しぶりにはまったく悲壮感がなく、むしろとても楽しそうでした。その後のご活躍を拝見すると、やっぱりお仕事が増えて大変なのだと思います(笑)。

そして夜はまたJENESISの近くで美味しい中華をいただき、1時間半ほど地下鉄に揺られてホテルに帰ってきました。まだツアー開始から1日ちょっとながら、頭が深圳ショックでジンワリと痺れ始めて、本来の人見知りは何処へやら、参加者の方とずーっと楽しくおしゃべりしつつ、あっという間に1日が終わってしまいました。

その4に続く

ニコ技深圳観察会に参加しました(その2)

華強プラザホテル

地下鉄の出口から見上げた華強北のランドマーク、プラザホテル

ニコ技深圳観察会は現地集合、現地解散のツアー。さらに中国は通信環境が他の国とは異なるので不安に思う人もいるかもしれませんが、観察会では深圳にたどり着くまでの経路や注意点などの細かい情報を事前に丁寧に共有してくれます。(ただし、手取り足取りサポートしてくれるワケではないのであくまで自力でたどり着くことが条件です。)私はさらに深圳に詳しい複数の友人からアドバイスをもらうことができたので、戸惑ったり不安に思うこともなく、準備を進めることができました。

いざ深圳へ

今回深圳へは定番通り香港から入りました。現在香港は一応中国に返還されていますが、いまだに外国扱いなので、入国手続きが必要です。香港から深圳に入ることができるイミグレは数箇所あり、最もポピュラーなのが罗湖口岸ですが、今回は初めてということもあり、香港の空港からバス1本で行ける皇岗口岸から入ることにしました。

が、私が行った時の皇岗口岸は人がとても少なくて、逆に外国人一人一人の入国審査がとても長く、無駄な緊張を強いられる感じだったので、やっぱりはじめて行く方には罗湖口岸がおススメかもしれません。

トラブル?発生

その後、地下鉄で華強北へ。スイカのような「深圳通」というカードを買って乗り込みました。深圳の地下鉄はまだ新しくとてもきれいなので、深圳にやってきたという実感も湧かないままでしたが、駅を降りたところで想定外の出来事発生。GPSがなかなか現在地をつかんでくれないのです。

最近は国内外を問わずGPSの道案内に慣れ切っていたので、まったく初めての土地でGPSが使えないのはかなり焦りました。少ししてやっと現在地が表示されましたが、数百メートルのレベルでずれています。結局GPSを切り、あらかじめダウンロードしていた地図を頼りにホテルにたどり着きました。

現在の深圳

翌日は観察会の一部のメンバーは華強北の電気街めぐりをしたり、中国で大流行りのシェアバイクを体験したりしていましたが、私は一人で銀行口座を作りに行ったので参加できませんでした。スケジュール的に仕方なかったとはいえ、電気街に行けなかったのは本当に心残り。最終日に行ったXiaomiショップも含め、深圳に行かれるならこれらのショップを巡る時間の確保と心おきなく買い物ができる準備をしておくことを強くおススメします。

また、少し前まで深圳は治安があまりよくないと言われていましたが、少なくとも華強北辺りで怖い思いをするようなことは滞在中一度もありませんでした。それどころか、買い物をする時も道に迷った時も銀行でカードを失くして焦った時も、現地の人はみなとても親切でした。

衛生面もほとんど気になることはなく、トイレもちゃんと個室です。箸やお皿などをまずお茶で洗う習慣が残っているものの、ほとんどのお店は「洗う必要ないんじゃない?」というくらい清潔な食器でした。10年ほど前に中国に行った際には「飲んじゃダメ」と言われた氷入りジュースもまったく問題ありませんでした。

ちなみに、深圳を楽しむための注意点は以下のブログがとても参考になります。このブログを書かれた方はニコ技深圳観察会に何度も参加されている「強者」です。
深圳クエスト2017

夜になってようやく観察会の方々と対面し、「明日からいよいよ」というテンションで深圳2日目は終わりました。

さあ、明日からはいよいよ観察会のスタートです。

その3に続く

ニコ技深圳観察会に参加しました(その1)

華強北

現在の深圳を象徴する巨大電気街を有する華強北

4月3日から6日まで「ニコ技深圳観察会」というツアーに参加しました。

この観察会がどういうものかは以下のまとめブログをご覧ください。
第7回ニコ技深圳観察会(2017年04月) 感想まとめ

4月のツアーについて今やっと公開!?という感じですが、あまりに深圳での体験が強烈で、帰ってきてすぐは文章にできませんでした。。(今もまだ十分こなれていませんが…)

とにかく、旅の間中まるで呪文のように「ヤバい、ヤバい」とずっと繰り返している感じでした。何がどう「ヤバい」のか、私の筆力ではとても表すことはできませんが、ひとまず感じたことを書いてみようと思います。

と、その前に、自分語りになってしまいますが、私がどうして深圳を目指すことになったのか、その経緯を書きたと思います。

そもそもなぜ深圳なのか

少し前は「世界の工場」というイメージがあった深圳ですが、現在は世界中からメイカーや投資家などが集まり、様々な価値を生み出す刺激的な街へと変貌を遂げています。

私が深圳を目指す直接のきっかけになったのは、世界を牽引するドローンメーカーのDJIとWeChatで瞬く間に中国を席捲したテンセントが共に深圳の企業だったからです。これほど魅力的な企業が短期間に複数も育つなんて、深圳には何かきっと特別な魅力があるに違いない、そう思いました。

この両社が次々と打ち出すサービスや製品、そして世界観は、かつて私がIT業界に足を踏み入れたときのワクワクを思い出させてくれました。「そうだよ、新しいテクノロジーって楽しいものだったじゃないか!!!」そんな気持ちがどんどん強くなり、深圳への憧れを強めていったのです。

しかもそれが、中国で起こっているということは私にとってまた別の意味を持っていました。というのも、まだ18歳のころ、中国への留学を夢見て中国語を勉強していたものの、父が急逝したため留学を断念したという経験があるからです。それからずっと使う機会もないままだった中国語と長年生業としてきたITが結びつくなんて、本当に夢にも思いませんでした。

そうして中国語の勉強を再開して1年も経たないうちに、幸運にもあのテンセントのサービスであるWeChat Payを含む中国決済の仕事に関われるようになり、深圳は憧れだけではなく、業務上知っておくべき街になりました。

ニコ技深圳観察会との出会い

そんなワケで、何としても深圳に行かねばと考えていたところ、Twitterでとても興味深い連載を見つけました。

「変化し続ける街 知られざる深セン」
http://diamond.jp/category/s-shinsen

私が様々な人から伝え聞いていた深圳の魅力を、これほど鮮やかに表現する筆者に私は俄然興味がわきました。この高須正和氏という人はいったい何者なのか?そうして調べたところ、定期的に深圳の企業をめぐるツアー「ニコ技深圳観察会」なるものを企画しているということが分かりました。

これまで築いた人脈を元に深圳の元気なスタートアップなどに連れていってくれて、しかも費用はほぼ実費のみ。それを知った瞬間、「行かねば!!」と頭にカーッと血が上り、すぐにツアー開催が告知されるというFacebookグループに申請を出し、開催が決まると、諸々の調整は後回しにしてまずは参加表明をしたのでした。

その2に続く

中国でSIMカードを買った話

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2017年4月2日から7日まで中国の深圳に行ってきました。その話はまた改めて記事にしますが、今回は中国で買ったSIMカードがあまりに「使える」のでそれについて書こうと思います。

ずっと日割りSIM

今回の旅では中国本土でもローミングで使える香港のSIMを事前に用意していましたが、それとは別にワケあって中国のSIMを買いました。

ひとまず滞在期間だけ使えればいいと思って「短期SIMが欲しい」と言ったところ、勧められたのは100元で通話・通信料が50元分チャージされているというもの。1日もしくは500MBを1元として使った分だけ課金されます。

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中国联通(ChinaUnicom)日租卡

サイトでは30元となっていますが、ともかく、商品の仕組みは同じです。(私が買ったのは「外国人料金」だったのかもしれません…)

しかも後から追加でチャージすることも可能。ということは、チャージ分を切らさなければずっと同じ番号を使えるってこと?と聞いてみると、条件を満たせばOKとのこと。が、その条件がイマイチ理解できませんでした。本当は理解するまでがんばりたかったのですが、次の予定があったのでその日はひとまずそこでお店を後にしました。

日本に帰ってきてからサイトで商品を確認しましたが、毎月の費用が6元ということはわかったものの、その6元をどう支払えばいいのかよくわかりません。そこで、中国の方に助けを求めたところ、毎月末のチャージ残高が6元あれば大丈夫、とのことでした。

そういえば深圳のショップで有効期限を聞いたところ、毎月6、次も6、みたいな説明を受けましたが何が「6」なのかよくわかりませんでした。これは毎月6元の残高があれば維持できるということだったようです。

日本にいながらあれこれできる

残高があっても一定期間利用履歴がないと無効になるという話もあるので、試しに一度国際ローミングでSMSの送受信をしてみたところ、問題なくできました。

さらに調べてみたところ、残高確認もチャージも利用履歴の確認もすべてサイトでできる模様。早速試してみると確かに残高確認も利用履歴も確認できました。そしてチャージの支払いはAlipayのアプリから電話番号を入れ、金額を指定してあっという間に完了。

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国際ローミングもOKだし、Alipayがあれば日本からチャージもできるし、何よりとてもリーズナブルなので、これなら気楽にずっと番号を維持できそうです。

中国はスマホがないと生活できないと言っても過言ではないので、日本の「格安SIM」などとは比較にならないくらい便利で安いシステムがあるんだなーと嬉しくなってしまいました。

ひとまずこれで当分中国に行くときはSIMのことを心配しなくていいようです。

あ、でも、このSIMでは当然のことならがGmail、Facebook、Twitter、LINEなどのサービスは使えません。そこはご注意くださいね。

また、私が買った「日割りSIM」はChina Unicom(中国聯通)のものです。China Mobile(中国移動)など他のキャリアはまた他のプランがあり、値段も異なります。言葉の問題もあるかもしれませんが、買う時はできるだけ確認してから買いましょう。

ちなみに、私が中国聯通を選んだのはまったくの偶然ですが、2017年上半期の段階ではこの日割SIMがいちばん安く番号を維持できるというウワサです。

これから中国に行ってみたい方のご参考になるとうれしいです。