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Maker Faire Shenzhenに出展しました

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4月にニコ技深圳深圳観察会に参加したことをきっかけに「ギーク中国語講座」なる勉強会を立ち上げました。
ギークのための中国語講座(Facebookページ)

この勉強会のメンバーとチームを組み、中国語の発音練習機器を開発し、11月10日から12日に深圳職業技術学院留仙洞キャンパスで開催されたMaker Faire Shenzhenに出展しました。ちょっと長くなりますが、それまでの道のりをまとめてみたいと思います。

●ギーク向け中国語講座を立ち上げる

私が中国テック界の躍進ぶりに驚き中国をフィールドにしようと決め、本格的に活動をはじめたのが2年ほど前。ところが当時の日本のIT業界にはまだ2000年前後のオフショア開発の経験から「嫌中」ムードが大勢を占めていたため、「最近の中国テック界はすごい」と周りの人にいくら言っても「は?中国??」という反応でした。

一方で、中国語の勉強会に参加してみると、興味の対象は伝統的な文化だったり食だったりするケースが多く、私がDJIのドローンがすごい!Wechatがすごい!と言ってみても興味を持ってくれる人は少数でした。

そんなわけで私は長い間同じ興味で中国語を勉強する仲間がいませんでしたが、ニコ技深圳観察会に参加したことで状況が一変しました。なんと、一緒に参加したメンバーが帰国後「中国語を勉強したいのでアドバイスしてほしい」と言ってくれたのです!!「これから日本のIT業界が世界と戦っていくには英語だけではなく中国語ができる技術者の養成が急務」と強く思っていながら「は?中国」いう反応ばかりでずっと焦りを感じていた私にとって、その状況はとてもとてもうれしく、また信じられないような気持ちでした。

せっかく湧きあがった中国語熱を冷ますわけにはいきません。何としても彼らにピッタリの講座を探そうといろいろ調べましたが、どのクラスもピンイン表記からはじまり、主人公が北京に留学し、中国の伝統文化に触れるようなスクリプトばかり。今の段階での彼らの興味は、例えば深圳の電気街、華強北でスムーズに買い物ができるスクリプトだということは明らかなのに…。

そこで自ら立ち上げたのが「ギーク中国語講座」でした。

●中国語声調チェック器「萌神」プロジェクト始動

私自身は中国語を教えた経験がなく、勉強会を運営することはとても不安でしたが、恐れずにスピード感を持ってやるのが深圳流。毎回ドタバタながら、たくさんの方に助けていただいて何とか10回シリーズを終えることができました。

勉強会で私がこだわったのが声調(四声)です。中国語には音の上がり下がりで4つの分類があり、それぞれ別の音と認識されるため、声調が間違っていると別の意味になったりまったく通じなかったりします。そこで定番のピンインの勉強は後回しにして、声調の練習を徹底的にやりました。

このあたりのこだわりは細かく書くと長くなるのでまた別の機会に書くとして、ひとまず声調重視で実施した勉強会が一定の成果を上げたこともあり、声調を1人でも楽しく勉強する機器を作れないかと、何気なくFacebookに投稿しました。すると、勉強会のメンバーから次々とアイディアが出て、「実際に一度作ってみようか」ということになり、「萌神」というプロジェクトが発足しました。

「萌神」の由来は勉強会のきっかけを作ってくれたニコ技深圳観察会を主宰する高須さんという方が深圳でそう呼ばれていると聞き、半ばノリで命名しました。そして、開発の最初の目標としたのがMaker Faire Shenzhenでした。

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勉強会の「恩人」である高須さん@MakerFaire深圳

●奇跡のような開発進行

成功するプロジェクトはキックオフミーティングの段階で「あ、このプロジェクトは成功するな」という空気感をもっていることがあります。私たちの「萌神」プロジェクトはまさにそういう雰囲気がありました。

私自身はアプリなどの開発現場から離れて久しいうえにハードの制作経験はまったくゼロ。そんな人間がリーダーを務めるという心もとないチームでしたが、蓋を開けてみたらそれぞれの得意分野が異なり、あたかもプロジェクトのために人選しかたのようなメンバーがすでに揃っていたのです。

途中で私が体調を崩したり、メンバーの一人が急きょ本業の都合で抜けてしまったり、何度も危機はありましたが、その都度チーム全員のがんばりと結束力で乗り越えました。本当に今思い返しても1人でも抜けていたら出展は叶わなかったことでしょう。

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最終チェックの様子

●いよいよ深圳へ!ところが…

奇跡のような開発進行の結果、何とか展示ができるレベルまで作品が仕上がり、あとは当日を迎えるだけとなり、持ち物も誰が何を持っていくかリストを作り、しっかりチェックをしたはずが、なんとハード側の心臓部であるラズパイを私が忘れてしまうという大失態を犯してしまいました。

私たちの作品はタブレット上で動くアプリで中国語の発音を録音するとそれを分析して点数を出し、合格するとwi-fiで結果を通信し、ラズパイの制御で「飴だし器」からご褒美の飴が出るというものでした。

そのため、持ち物リストは「飴だし器」となっていて、飴だし器本体だけで安心してしまったのです。ラズパイ制御で動いていることは認識していたのに、どうして気付かなかったのか今でも不思議です。きっと、優秀なスタッフに頼りすぎて気が緩んだのだと思います。

それでも私が意気消沈していてはチームにさらに申し訳ありません。翌日には別のスタッフがラズパイを持って来てくれることになったので、初日1日だけなんとか乗り切れば大丈夫。そう心に喝を入れましたが、すでに深圳入りしていた別のスタッフが深圳の街でラズパイを調達し、日本にいるハード責任者と連絡を取りながら現地で制作を進めてくれたのです。素晴らしいメンバーと巨大電気街を有する深圳という街が私の失敗をリカバリーしてくれました。

深圳は華強北で部品を調達

●大盛況だった萌神ブース

中国語の発音練習機器を中国で展示して受け入れられるのか?と思われるかも知れませんが、中国には多くの方言があり、普通話といわれる標準語を完璧に発音できない人も少なくありません。そのため、特に幼児教育では正しい普通話の発音を練習するというニーズがあるのです。狙い通り、多くの子どもたちが「萌神」で遊んでくれて、本当に見ているだけで幸せな気持ちになりました。

子ども達に大人気の「萌神」

また、日本で言う「早口言葉」を例文として採用し、大人でも楽しめるようにしました。これもまずまず狙い通りで、途中で言い淀んで笑い出してしまったり、完璧に発音して自慢げだったり、それなりに楽しんでいただけたと思います。

今回「萌神」本体自体を動かすことはできず、マスコットとモニター置き場としただけでしたが、それでも存在感抜群で大いに集客に役だってくれました。また、「萌」で日本らしさを示すアイディアもバッチリで、日本語を勉強している、日本のアニメに興味があるという若い方は開催期間中毎日私たちブースに足を運んでくれました。

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恩人、高須さんを模した「萌神」くんは抜群の存在感

●メディア取材や教育関係の会社からアプローチも

今回の出展では本当にたくさんの方に足を運んでもらい、教育関係の会社から「深圳にオフィスはあるのか」と聞かれたりメディアの取材を受けたりしました。ただ、私たちのプロジェクトは始まったばかりで、母体となる勉強会も有志が集まったものに過ぎません。これからどうなるのかまったく未知数ですが、でも、この体験を活かし、今後もプロジェクトを継続するつもりです。

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メディアの取材を受ける

●深圳速度に乗ってみる

ニコ技深圳観察会に参加し、始めて深圳に行ってから7カ月後にまさか自分自身が出展者になるとは夢にも思いませんでした。本来私はのんびり屋なので、深圳速度についていこうとすると目が回りそうですが、それでもそれに乗ってみると思わぬことが起こります。何よりステキな仲間に恵まれたことはもう感謝という他ありません。

今回のMaker Faire深圳を機にまた中国語に興味を持ってくれた日本のエンジニアがたくさんいます。今後も「ギーク中国語講座」が日本のIT業界における中国語ムーブメントを牽引する存在となるよう、引き続き仲間とがんばりたいと思っています。

最近深圳が気になるなーという方、まずは一度行ってみましょう!!!きっと人生がキラキラしてきますよ。そして中国語に興味を持ったらぜひ「ギーク中国語講座」を思い出してもらえるとうれしいです。

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3日間の展示を終え、すがすがしい表情のメンバー

ニコ技深圳観察会に参加しました(まとめ)

夜の華強北

深圳から戻り、すぐにブログを書き始めましたが、あまりに深圳ショックが大きくてなかなか書き進めることができませんでした。何とか書いては見たものの、今読み返してみても自分のためだけに書いた小学生の感想文のようですが、観察会のルールでもあるのでひとまず公開します。

中国ブームの火付け役に

もう一つ、深圳滞在中につぶやかずにいられなかった私のツイートも掲載しておきます。

この二つは影響力の強い参加メンバーに拾われたこともあり、フォロワー数わずか250というほぼ独り言アカウントながら両方で30,000くらいのインプレッションを獲得しました。

この後、Twitterでは空前の、といっていいほど「中国すげー」というつぶやきが溢れましたが、そのブームに観察会が少なからず寄与しているのでは、と私自身のツイートの広がりを見ても感じています。

私自身の取り組み

ブログはなかなか書けずにいましたが、深圳から戻ってから、私も新たな取り組みを始めました。

一つは深圳をきっかけに中国テック界に興味を持ち、中国語を勉強したいと思うようになった人たちを対象とした中国語勉強会を立ち上げたこと、もう一つは、お話を伺って頭がいっぱいになってしまったJENESISさんのインターンに実際にチャレンジすると決めたことです。

勉強会は想像をはるかに超える参加者が集まり、しかも高いモチベーションで自ら積極的に勉強を進め、お互いに情報共有をしたり教えあったり、素晴らしい方ばかり。これも深圳のご加護かと感動しっぱなしです。

インターンの件は考えれば考えるほど「行かない理由はない」と思え、行けそうな最速のタイミングで行くことにしました。これはまたブログに書きたいと思います。

深圳では「とにかくやってみる」という気風がイノベーションを起こしていくというリアルな現場を目の当たりにしました。それを体験しながら、今までと同じ場所に漫然と立ち止まっているわけにはいきません。

これは冗談でもなんでもなく、リアルな私の感覚です。みなさんもまずは一度、深圳に行ってみることをおすすめします。

最後に、このような企画を長く続けてくれている高須さんに、改めて心からお礼を言いたいと思います。観察会が熱くなるにつれ、参加者も観察に熱中してしまい、高須さんの声を枯らせてしまったこと、本当にすみませんでした。

でも、今後も観察会での経験を生かし、「まずはやってみる」ことを心がけたいと思います。では、ひとまず、インターンに行ってきます!!

ニコ技深圳観察会に参加しました(その5)

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Seeedで参加者のみなさんと(大好きな1枚)

観察会3日目。すでに頭の中はかなり「深圳ヤバい」という風になってます。

この日も華強北のスタバ前に集合し、バスで一路宝安地区へ。

深圳を象徴するような企業へ次々と

最初の訪問場所はAsh Cloud。生産管理から人の管理、そして品質管理まですべて統合されたアプリで行っている工場です。

事前に少し説明はあったものの、一歩足を踏み入れた瞬間その「狂気」がひしひしと伝わってきました。見学の記念にいただいたボールペンのケースにはこう書かれています。

整合单一系统于App內

漢字を見ればだいたいの意味が分ると思いますが、アプリ内のシステムにすべてが統合されているということで、それがこの工場の最大の特徴であると自ら宣言しているわけです。品質とか真心とかではなく、アプリ。それこそがAsh Cloudなのです。

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参加者の方とアプリの説明を受ける

アプリのデモを見せていただきましたが、こうして思い出すだけでもその狂気の沙汰にめまいがします。工場でのあらゆる管理を想定し、必要な情報が見やすく適切に紐づいていて、見たところ動作も安定していました。またユーザーインターフェースも素晴らしかったので、おそらく新入社員がアプリを使いこなすハードルも低いでしょう。

私もそれなりにサイトやアプリの開発に関わってきたので、あのアプリを作るのにどれだけの労力が必要だったかよく分かります。日本であれば「ここはパッケージの○○を利用して」みたいになりそうな部分(例えば人事管理)も何が何でもアプリに入れてしまうというのは熱意を通り越してまさに狂気としか言いようがありません。ただ、最先端のテクノロジーを使い倒し、生活を豊かにしていこうという前向きなエネルギーはいかにも深圳らしいと感じました。

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Ash Cloudのキッチンは撮影用のスタジオさながら

狂気を目の当たりにしたおかげでふらふらになりつつ、次はSeeedへ。安く、早く、小ロットでの供給に応えることでメイカーのcreativityを支えている企業です。Seeedという企業を一口で説明するのはとても難しいので、興味がある方はぜひ高須氏の著作「メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない(インプレスR&D 2016)」をご覧ください。

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オープンで他の工場とはまったく違った雰囲気のSeeed

ちなみに、今回訪問した企業の中で、このSeeedがいちばん印象的でした。まさに現在の深圳を象徴する代表的な企業。もちろん、どの企業も勢いがあり、働いている方もみな熱心で素晴らしかったのですが、アクセラレーターでもなく、ただの工場でもなく、でもメイカーに欠かせないポジションを築いているSeeedという企業のオリジナリティがたまらなく心地よく感じられました。

そして昼食後は再開発が進む南山地区にメイカーのための新しい拠点として誕生した柴火Xfactoryへ。午前中に訪問したSeeedが運営しています。

そこではXfactoryのWayneさんが深圳の歴史から、次のメイカーフェアの計画まで説明をしてくださいました。Xfactory周辺は今はまだ開発途上ですが、今後新たなメイカーの聖地となっていくのではないかと感じさせる空気がありました。ここは他の企業や工場と比べ、個人でも行きやすいと思うので、深圳のメイカームーブメントを追いかけたい人は要チェックだと思います。

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柴火Xfactoryで参加者のみなさんと

ここまででも完全な消化不良状態でしたが、次に向かったのがInsta 360です。高品質な360度カメラで一気に世界の注目を集めた企業なので、中国に興味がなくても知っている方がいるのではないでしょうか。

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見る人が見ればきっと大興奮のInsta360進化の歴史

最近、本格的に日本にも進出したとのことで、私たちの訪問をとても歓迎してくれて、過去の製品や最新の製品を案内してもらいましたが、私自身360度カメラについてあまり知識がなく、正直なところプレゼンの内容はよくわかりませんでした。その後日本に帰って来てから少し調べたところ、カメラの性能はもちろん、連携するアプリの操作性も素晴らしく、圧倒的な商品力を持つことが分かりました。それなのに価格はお手頃。世界中の撮影マニアを瞬時で虜にしたのも納得です。

いよいよテンセントへ

プレゼンの内容はよくわからずとも、ひとまず勢いのあるInsta 360を訪問できたという満足感に浸りつつ、次に向かったのがTencent。そう、WeChatで中国を席捲し、私を深圳に導いた「張本人」の腾讯です。

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巨大なテンセントの本社ビル

ビルのロゴを見たところから大興奮で、ロビーにあったQQペンギンのオブジェと写真を撮り、消化不良の頭はひとまず横に置いておいて、完全に観光客気分でVR チームが待つ会議室へと向かいました。

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完全に観光客気分でQQペンギンと記念撮影

個人的にはその段階でもう目的は果たしていましたが、事件は、会議室で起こりました(笑)。今回、VRチームが私たち観察会を受け入れてくれた理由の一つは、参加メンバーの一人であるGOROmanさんと面談するためだったそうです。

さっそくGOROmanさんによるプレゼン。実は同じプレゼンをInsta 360でも見ていて、GOROmanさんのプレゼン能力にビックリしてしまったのですが、Tencentでは日本語だったこともあり、さらにそのうまさにビックリ!!あっという間にTencentのVR担当者をひきつけて、ワクワクする話がずんずんと進んでいきます。「こ、これは、もしかして歴史的瞬間に居合わせているのかも…」と感じずにはいられませんでした。

本当に盛りだくさんの観察会でしたが、1日目より2日目、2日目より3日目とヤバさ加減がどんどん増していったなーと、こうして振り返ってみて改めて感じます。Tencentの締めはお土産ショップでみんなで爆買い。こうして全日程が終了しました。

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テンセントのお土産ショップで爆買い

この後、私はどうしてもXiaomiショップへ行きたくて、後ろ髪をひかれつつ最後の食事を中座しました。ちゃんとごあいさつできなかった人もいましたが、今はSNSがある時代。参加メンバーとはその後もちゃんとつながって、私自身、帰国後新たな取り組みを始めたのでした。

まとめにつづく)

ニコ技深圳観察会に参加しました(その4)

深圳スタートアップ

Dobotのエントランスで参加者のみなさんと

観察会2日目。華強北のスターバックス前に集合して、その日はすぐにバスに乗り込み郊外へ。

製品に対する意識が変わる「現場」体験

最初に見学したのは昨日見学したTroublemakerさんが提携している工場です。

祝日が終わったので、この日はガチで稼働しているラインや金型のメンテなどをしている現場を見学することができました。経営者はイタリア人(たぶん)で、深圳の中でも比較的高品質な工場とのことでした。それでも、最新鋭という感じではなく、さながら子供の頃近所にあった町工場を彷彿とさせる雰囲気。

深圳工場

下町にあるような町工場の風情

私たちが見学した時にはスマホケースとケーブルのセットをラインでパッケージしていました。よどみなく黙々と作業を続ける工員さんたち。その工程を見ていたら、いつも無造作にゴミ箱に捨てていた様々なパッケージが突然愛しいような感じになるから不思議です。

深圳工場

ラインで黙々と作業をする工員の方々

また、私たちが日常的に使っているスマホケーブルの中には多数の電線があり、それをピシッと整列させなければいけないそうです。それを並べたり揃えたりする工具もあり、またまた急に「ケーブルなんて百均で十分でしょ?」みたいに思っていた自分が恥ずかしくなりました。作っている現場を見て、やっと高いケーブルの値段の理由がわかりました。

深圳工場

ケーブルの先端での配列が正しいかを拡大してチェックする

「超酷」なスタートアップへ

そして昼食後は再びバスで南山地区へ。DobotとMakeblockという深圳の中でもとても注目されている二つのスタートアップを訪問しました。どちらも注目されているだけあって、私は何度も「超酷~」とつぶやいてしまいました。中国語で「かっこいい」「クールだ」といった意味の言葉です。

Dobotは完全な産業用ではなく、でもおもちゃでもない、アイディア次第で様々な使い方ができるロボットアームです。デモも見せていただきましたが、文字を書いたりレーザー彫刻をしたり、そして何と3Dプリンターにもなってしまうという優れものです。直感的にプログラムを組むことができるソフトもあり、教育教材としても使えるようになっています。

Dobot

かわいいロボットアーム、Dobot

Makeblockはその名の通り何十種類ものパーツを組み合わせて自由な発想で電気工作を楽しめるキットです。いきなりオリジナル作品を作るのはハードルが高いという方には、プラモデルのように設計図通りに組み立てればOKというセットもあります。代表的なセット商品である「mBot」は日本でも13,000円ほどで購入可能。手頃な価格なので、大人が遊んでもよし、お子さんのプログラミング教育に使ってもよし、ですね。

MakeBlock

中国の獅子舞ロボット。スイッチを入れると太鼓を打ち鳴らし、ドラをたたき、獅子が踊ります。

この2社の担当者とは日本に帰国後もつながることができたので、今後日本マーケットの進出にあたって何かサポートができないかなーと思っています。訪れた企業とその後どういう関係を築けるかは当然のことながら自分次第。多少あつかましいくらいでもいいので、ファンになった企業にはしっかりアピールするのがねこりん流です(笑)

心に創造力の火を灯そう

そして、この日の最後に訪問したのは柴火創客空間。中国語で「薪」を意味する「柴火」、その名の通り、メイカーたちの創造力に火をつけるためのコミュニティスペースで、Seeedという会社が運営しています。(Seeedは3日目に訪れるので、そこで詳しく説明します。)ニコ技深圳観察会を早くから支援してくださっているというVioletさんがイギリスでの活動やスペースの目的、意義、どんなことを期待しているのかをお話しししてくれました。

特に印象的だったのが、メイカーに関する考え方です。メイカーというとどちらかといえばハードを作る人、というイメージが強いですが、柴火に掲げられた図では、普通の人が思いつかないような(創造的な)アイディアを実際に使える「形」にし、企業と一般大衆の橋渡しをする人々がメイカーだというのです。

柴火

柴火が考えるメイカー像を説明するVioletさん

私自身は電気工作もしませんし、仕事もメーカーではなく、一貫してネット上の実態があるようなないようなものを扱ってきました。でも、柴火でVioletさんからこのお話を伺い、「あ、私もメイカーなのかもしれない」そう思ったのでした。

深圳の新しいおしゃれ空間OCT

その後、柴火創客空間があるOCT(華橋城)を少しだけ散策。OCTは深圳についた翌日、一人で訪れて銀行口座を作ったり初WeChat Payでご飯を食べたりしましたが、改めて散策して本当に大好きになりました。昔、工場で使われていたと思われる機器がオブジェとして街のアクセントになっている感じや、ひしめくように立ちながらぶ個性豊かなお店、カフェでのんびりお茶をしている人々、本当に街のどこを歩いていてもワクワクします。

OCT

再開発が進むOCTでは工場にあった機器の一部も素敵なオブジェに変身

そして雲南の麺をすすりながら、ぬるいビールを飲み(これぞ中国)、ホテルまでは中国のタクシー配車アプリ滴滴を使って帰ってきました。

その5続く

ニコ技深圳観察会に参加しました(その3)

JENESIS

JENESISのエントランスで参加者のみなさんと

3日目、いよいよ深圳観察ツアーがスタートしました。

華強北のアクセラレーター

最初はアクセラレーターのTroubleMakerとHAX。

正直なところ、スタートアップのサービスには興味があっても、どんな風に成長していくのかはあまり興味がなかったので、アクセラレーターが具体的にどんなことをしているのかほとんどイメージがありませんでした。

そんな中、TroubleMakerで伺ったお話は、まるで親戚のおじさんみたいに(こんな表現でごめんなさい…)寄り添って支援するという印象でした。困ったことはないかと気を配り、一緒にご飯を食べる。そんなつながりの中で、みんなで楽しいアイディアを磨いていく。

アクセラレーターがそうなのか、深圳だからそうなのか、TroubleMakerがそういうチームなのか、私にはよくわかりません。でも、日本では前時代の悪しきものとして完全に嫌われている「飲みニュケーション」的なものが肯定的に機能していることがとても新鮮に感じられました。

そして次はHAX。こちらは言ってみれば本気の学祭前夜という雰囲気。決められた期限の中で、クラウドファンディングに出品し資金を集めるまでを支援しています。当日はそんなたくさんのチームが制作に没頭している姿が…見られるはずだったんですが、あいにく中国の祝日で、残念ながらオフィスは閑散としていました。それでもいつかのチームがデスクで作業をしていたので、やはり学祭前夜のような熱気を感じることはできました。

インターン話で頭がいっぱいに

その後、バスに乗って宝安地区にあるJENESISへ。ここは藤岡さんという日本の方が経営する工場で、日本の大手が手掛ける製品の製造もおこなっています。でも、私にとって何といっても衝撃だったのがいつでもインターン受け入れOKということ。しかも参加者の中に実際体験された方がいて、私はすっかりそのことで頭がいっぱいになってしまい、その後のお話しがほとんど耳に入りませんでした。(本当にすみません…)

その後、やはり休日ということで稼働はしていませんでしたが、実際のラインを見学させていただき、品質管理についての工夫などを聞かせていただきました。

私自身は何かを工場に発注したという経験がなので、そういう方々がどういうポイントで工場を選択するのかほとんどイメージすることができません。また、深圳の工場自体もはじめてだったので、比較対象がなく、見学した際にはそれほど強く感じませんでしたが、思い返してみるとJENESISの工場はいい意味でとても「日本的」でした。これなら日本からも発注が相次いで大変だろうと思いましたが、人件費の高騰などで「生き残りに必死」という言葉がとても印象的でした。

でも、藤岡さんのお話しぶりにはまったく悲壮感がなく、むしろとても楽しそうでした。その後のご活躍を拝見すると、やっぱりお仕事が増えて大変なのだと思います(笑)。

そして夜はまたJENESISの近くで美味しい中華をいただき、1時間半ほど地下鉄に揺られてホテルに帰ってきました。まだツアー開始から1日ちょっとながら、頭が深圳ショックでジンワリと痺れ始めて、本来の人見知りは何処へやら、参加者の方とずーっと楽しくおしゃべりしつつ、あっという間に1日が終わってしまいました。

その4に続く